こんにちは。
今日は、当教室の名前《An die musik》の由来についてお話しさせていただきます。
私はフランツ・シューベルトの音楽がとても好きで、ピアノ独奏曲、室内楽、そして歌曲もこれまで多く演奏してきました。
シューベルトの歌曲は600曲ほどあります。
シューベルトは31歳という若さでこの世を去っていますが、その31年の生涯でシンフォニーや他の作品もすべて含めると1000曲ほどの作品を残しています。
自分が気に入らないものはすぐに破り捨ててしまった、という説もあることから、作曲した数はおそらくそれ以上だと思われます。
その600曲もの歌曲のなかでもとりわけ私が大切な心の友のように思っている、自分の音楽に対する思いの原点のような作品《An die musik D547》(音楽に寄せて) 。
詩はシューベルトの親友でもあったショーバーによるものです。
Du holde Kunst,in wieviel grauen Stunden,
Wo mich des Lebens wilder Kreis umstrickt,
Hast du mein Herz zu warmer Lieb entzunden,
Hast mich in eine beßre Welt entrückt!
Oft hat ein Seufzer,deiner Harf’ entflossen,
Ein süßer,heiliger Akkord von dir
Den Himmel beßrer Zeiten mir erschlossen,
Du holde Kunst,ich danke dir dafür!
いとおしい芸術よ、どれほどのくすんだ時間、
私が荒れ果てた人生の環にくるみ込まれた時、
あなたは私の心に温かい愛の火をつけて、
私をより良い世界に連れ去ってくれたことか!
しばしば、あなたの竪琴から発せられる嘆息、
あなたの甘く厳粛な和音が
より良い時間の天国を私に開いてくれた、
いとおしい芸術よ、あなたに感謝する!
お気づきでしょうか。
この詩の本文には「musik」(音楽) という言葉がひとつも出てきません。
「du」(あなた) という言葉で「musik」(音楽) を形容しています。
シューベルトにとって音楽はそのような存在であった、ということがこの作品から読み取ることができ、そのことに気づいてから、私にとって自分のなかになくてはならない大切な作品になりました。
これまでソプラノ、テノール、バリトン、の方と演奏したことがありますが、この6月にアルトの方と演奏させていただきます。
この楽譜はB-durですが原調はD-durです。
《An die musik》は直訳すると「音楽に寄せて」という意味ですが、シューベルトの音楽に対する思い、芸術に感謝する気持ちが深く込められた作品です。
〜 音楽への思い「いとおしい芸術に感謝する」〜
この心持ちで当教室の名前とさせていただいております。
今日も音楽とともに♫
An die musik ピアノ教室
竹村浄子