海外から取り寄せでしか手に入らないので時間がかかりましたが、恩師が薦めてくださった楽譜がやっと手元に届きました。
J.S.バッハの《フーガの技法》ツェルニー版です。
《フーガの技法》は長い間、バッハの最後の作品として言われてきましたが、近年の研究により見直され、1742年ごろには書き始められ、1746年ごろには大半が出来上がっていたことが明らかになっています。
最後の未完のフーガ(BWV1080 19)のみが最晩年の筆跡で書かれているということもわかりました。
ツェルニー版は、練習曲集などで知られているあのツェルニーがバッハの自筆譜ではなく初版印刷譜を元に校訂したもので、1838年にライプツィヒのペータース社から出版されています。
初版印刷譜ではスコアに記譜されているのに対し、ツェルニーは大譜表から成るピアノ譜、しかもハ音記号は使わずト音記号とへ音記号のみで記譜しています。
これは、ピアノ演奏に対し研究熱心であったツェルニーが、ハ音記号やスコアを見慣れないピアノ奏者のために読譜しやすいように書き換えたものと言えるでしょう。
このベーレンライター版は、ツェルニーが初版印刷譜と少し変更している箇所も明記されていて、19世紀においてバッハの音楽がどのように捉えられていたかを汲み取ることができる貴重な校訂版だと思います。
クララ・シューマン(ヴィーク)が毎朝欠かさずJ.S.バッハの作品を弾いていたという記録もありますが、ピアノ奏者にとってバッハの音楽は生涯の学び、バイブル、と言えると心にとめています。
今週も音楽とともに佳き日々となりますように♫